世界は感情で動く


■所感
「この本は私たちの直感がどんなときに、どうして、どんな風に的をはずしてしまうのかを解説する。」
とされていて様々な心理効果や法則について事象と共に紹介されていてなかなか学びの多い内容であった。
特にリスクに直面したときの判断力の低下とその裏付けの心理状態は投資をやる人間としては非常に勉強になった。

■ピックアップ
・行動経済学
人間が不確実性のもとでは必ずしも合理的な意思決定をせずある規則から外れる事を実証。株式市場における投資家の心理分析や行動ファイナンス理論の基礎を築き、これが「行動経済学」という新しい経済学の生まれる契機となった。(プロスペクト理論)

・ピークエンドの法則
「あらゆる経験の快苦は、ほぼ完全にピーク時と終了時の快苦で決まる」
人間の記憶は出来事すべてを逐一記憶することは不可能なので、その記憶がその経験の快苦のすべてを決定してしまう。

・コンコルドの誤謬
投資が回収できないと分かっていても、今までの投資や時間を惜しみ投資を継続してしまう心理傾向の通称。
こうした状況を回避するには2つある。
第一はトラップに早めに気づきゲーム外に留まる事。
しかしいったんはじまってしまったら抜けるのは容易ではない。
第二はできるだけ早く損失を認めてできるだけ早く降りる事。

・フレーミング効果
同一の意味の選択肢であってもその表現が異なるこたによって逆の選択をしてしまう現象のこと。
コップの水はまだ半分かもう半分か。

・合理的な人とは、感情のない人ではなく、感情のコントロールができる人。
言いかえれば、合理的な人は自分の感情は状態と自分の認知プロセスを頭脳の働きを通してより正確で洗練されたやり方で表現することができるということ。

・少数の法則
試行回数が少ないにもかかわらず大数の法則が当てはまると錯覚することをいう。
コイントスで表が3回続くと次こそは裏と予測する。実は裏と表が50%に近づくには無限に近いほどの回数でコインを投げなければならない。(大数の法則)

・確実性効果
0%や100%などの確実性の高いものに価値を感じる行動経済学上の心理効果のこと

・私たちはリスクや不確実さを前にすると、不安や苦悩などの強い感情が生まれてしまう。そこでこのような否定的感情を排除しようと躍起になり、できるなら損をする確率をゼロにしてしまいたいと思う。この考え方は実に非合理である。多くの場合もっとも賢明なやり方はリスクをゼロにするのではなく、部分的な減少を計ることだ。

・利用可能性
ヒューリスティックとは、個人的に経験したことなどすぐに思い浮かぶ事象は頻繁に起きることだと感じる現象である。

・アンカリング効果
印象的な数値や情報が基準となり、 その後の行動に影響を与える効果のこと。
店頭で値引き前の価格が打消しで安くなっていた場合、値引き前の価格がアンカー(基準)となってお買い得と判断してしまう。

・バーナム効果
誰にでも当てはまりそうな曖昧で一般的な性格に関する記述を自分だけに当てはまるものとして受け止めること。
占いなどは、自分の都合の良い部分だけが、記憶に残りよく当たってると思い込む。

・集団思考/集団浅慮
集団思考の罠とは、集団で物事を決めるときに集団の意見一致を優先させて不合理もしくは危険な意思決定をしてしまうことです。
団結力のある集団
構造的な欠陥を抱えている(意見の多様性の欠如、不公平な意思決定など)
刺激の多い状況に置かれている(集団外部からの強い脅威など)
以上の3つの条件を満たすと集団思考の罠に陥りやすいといわれています。

・他の集団への偏見
相手方の人びと全て均質と考えるメカニズムは、自分の集団に属さないものを劣っていると判断するメカニズムと同じものである。

・ハロー効果
ある対象を評価する時に、それが持つ顕著な特徴に引きずられて他の特徴についての評価が歪められる現象のこと。

・自分を知ることの難しさ
自分を適切に評価できる能力は、学ぶべきことを学ぶために不可欠な資質である。

・順応効果
初頭効果=最初の印象が強く残ること
親近効果=最後の印象が強く残ること

・理性は感情の奴隷である ヒューム
どんなに優れた人でも、大事な決定を迫られたとき、あらゆる選択肢を秤にかけ、コストとリターンをよく分析し、効用と確率を注意深く吟味したうえで確固とした決定をできるわけではない。

・保有効果
保有効果とは、自分が保有しているものに高い価値を感じ、手放すことに抵抗を感じる現象のこと。 保有期間が長くなるほど手放すこと「損失」ととらえ、回避しようとする。
多くの人の選択を決めるのは現状維持の傾向。

・損失回避性
利益から得られる満足より同額の損失から得られる苦痛の方が大きいことから、損失を利益より大きく評価する人間心理のことをいう。