優生学と人間社会


■所管
4名の筆者らにより優生学について時代を追いながら解説されている。
4名に分かれているので、内容の被りや描き方の違いがややわかりにくかった。

中身としては人の善悪、物事の良し悪しの判断を考えさせられる内容だった。
例えば優秀な人間だけを残し文明が進化したとする。しかし、行く末は資源を使い果たし種が滅ぶとなった時果たして優秀であると思われていた人間は本当に優秀であると言えるのか。
IQや偏差値での優劣は学業上の線引きなだけであり、本質的に優秀であるかはわからない気がする。
また、生物学的に考えたときの逆淘汰という概念は面白い。
優生学が差別的な事なのか必要なものなのかは判断の難しさを感じた。

■ピックアップ
・遺伝子の操作は生命の核心に手を触れるという特別のタブーの意識を人に起こさせる。遺伝子組み換え食品への抵抗感はそのあらわれだろう。

・シャルマイヤー
良い遺伝形質を積極的に増やそうとする積極的優生学と、悪い遺伝形質を抑えようとする消極的優生学がある。
しかし良い遺伝子遺伝形質を意図して増やすのは人間では難しい為、現実に行われたほとんどは消極的優生学でありその代表例が断種法である。

・遺伝子決定論
遺伝子が身体的、行動的形質を決定するという信念。

・医学ないし公衆衛生の発達がそれまで淘汰されてきた虚弱な個体が延命と生殖を許されるようになった。淘汰のメカニズムは欠陥を持っていたり、全般的に虚弱な人間を延命させる医学の働きにより弱められている。

・プレッツ
戦争は優秀な者から犠牲になり逆淘汰を引き起こす。

・逆淘汰の原因
優良健全な階層における子供の産み控え、劣悪者の高出生率と医療、福祉の発達による死亡率低下、戦争による壮健な青年の多くが命を落とす結果、優良健全な者の子孫が減ることが逆淘汰の原因とみなされた。

・ダーウィン
自然淘汰。本来は淘汰されるべき虚弱者を生き長らせることで、人間という種の進化を阻害している。

・フランス
遺伝がすべてを決定するとは考えず受け継いだ性質を変える力を環境要因に見出す考え方。